症状の理解も必要なスキルの一つ

介護サービスを利用する人のほとんどが、高齢者といっても過言ではありません。このため介護現場には、高齢者特有の慢性疾患を抱えている利用者も目立ちます。

本来、身体や疾患の管理は医師や看護師の領域ではありますが、最初に利用者の異常を発見しやすいのは、やはり介護の最前線で仕事をする介護職員。したがって医療職だけでなく介護職員にも、高齢者がかかりやすい疾患について理解し、症状が悪化して手遅れにならないように、日頃から十分な観察と初動体制の整備が必要になります。

特に利用者の症状を的確に見極めるには、高齢者ならではの特徴を理解しなければなりません。例えば症状の出現の仕方が不安定であることも、その1つです。高齢者の症状は出現のスピードや範囲にムラがあり、本人からの訴えもハッキリしないことがよくあります。重度の肺炎にかかっていても、表面的には風邪のような微熱が続くだけだったり、本来は痛みを感じる心筋梗塞でも、痛みが全く別の部位に出たり、痛みそのものを感じないケースさえあります。

もう1つ高齢者ならではの特徴で見逃せないのが、原疾患と無関係な部位で合併症を起こしやすい点。例えば脳血管障害で寝たきりになった場合、そこから褥瘡性潰瘍や尿路感染症さらには肺炎など、脳とは全く別の部位に合併することもあります。こうなると原疾患の治癒が難しくなる上、ADLの低下も招いてしまいます。

したがって介護職員としては、利用者の表面的な症状や言葉だけの訴えを鵜呑みにするのではなく、日頃の生活習慣や行動パターンなどと比べながら、一人ひとりを注意深く観察しなければなりません。